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診療方針

 

食道癌

担当:岸 健太郎(金曜日診察)
 益澤 徹 (月曜日診察)

食道がんの診療方針

 当院での食道癌治療における基本的な考え方は、高い根治性(どれぐらいきっちり病巣を切除できたか)を目指しつつ患者さんの肉体的・精神的負担を軽くすることです。食道癌に対する治療は手術のみならず、化学放射線療法化学療法も重要な位置を占めていますので、消化器内科と連携を密にしながら、患者さんの治療方針を決定しています。

 ①腫瘍の進行度、②患者さんの全身状態に基づいて、食道癌診断・治療ガイドラインをベースに、我々の側から治療方針の候補を患者さんに提示し、最終的には患者さんやご家族とよく話し合った上で治療方針を決定しています。

現在、食道がんに対しては複数の治療法が並立しています。当科では下記の食道癌診断・治療ガイドラインを準拠した方針で行っています。

 

1) 粘膜内にとどまった小さな病変(stage 0)の場合は内視鏡下粘膜切除が標準的治療です。病変により放射線療法が行われることもあります。

2) ある程度進行しているが原発巣、リンパ節転移とも切除範囲内に限局している(stage I-III)場合は外科的切除が標準的治療です。しかし、a)stage II-IIIの場合は、化学療法を手術の前に行うのが標準です。b) リンパ節転移のないstage Iの場合、食道温存を目的として化学放射線療法を行う場合もあります。外科的切除との成績は同等との報告もありますが、後に再燃し外科的切除の追加が必要となることがあります。c)手術に耐えられない体力・臓器機能低下がある場合、化学放射線療法により根治を目指した治療が行われることもあります。

3)stage IVでは化学療法が行われます。放射線療法や化学放射線療法も選択肢の一つです。腫瘍の縮小が見られれば手術が考慮されます。多臓器への転移がある場合(stage IVb)は、手術はできません。対症療法としてバイパス術、ステント留置、腸瘻・胃瘻造設術などが行われることもあります。

 

 食道癌手術における当科の特色

1.胸腔鏡および腹腔鏡を用いた食道癌手術(患者さんへの負担が少ない低侵襲手術を採用)

 

 

 

 


 食道は頸部(くび)から腹部にわたる細長い臓器です。食道癌の手術は、早期のものであっても、原則として頸部(くび)にあたる部分の食道を残して、胸部、腹部の食道を切除します。食道癌はリンパ節に転移を起こす頻度が高いため、癌の本体(原発巣といいます)のみならず、周囲のリンパ節も同時に切除する必要があります。転移を起こしうるリンパ節も頸部・胸部・腹部の3 領域にわたるため、原則として、これら3領域のリンパ節を食道とともに切除します(この操作をリンパ節郭清といいます)。そして切除された食道に代わる再建臓器として、胃管を用いて頸部に残された食道と吻合して(つないで)消化管再建を行います。食道が元あった部分に胃管を通す後縦隔経路を採用し、縫合不全は5%以下となっています。(縫合不全とは、吻合部がきっちりくっつかずに唾液などが周囲組織に漏れて強い炎症を起こす状態であり、これが治るまでは食事を取ることができず、患者さんにとっては肉体的にも精神的にも非常に大きな負担を強いられることになります。)

上記に示した食道癌の手術は、原則として頸部(くび)、胸部、腹部の3経路からアプローチします。このうち、胸部および腹部の操作を胸腔鏡および腹腔鏡と呼ばれるカメラを用いて、小さい皮膚切開創(きず)からアプローチして手術を行います。この方法は、胸腹壁の損傷が減ることで術後の痛みが少ないことに加えて、手術中の出血や体内からの水分の喪失が少なく、大きい皮膚切開創で行った場合よりも術後の回復が早くなります。

 

 特に腹部操作は胃癌手術で培った技術を応用し、単孔式腹腔鏡下胃管作成術を行うことによって、腹部創は臍を利用した部分だけとなります。術後の痛みもより軽減し、早期離床が可能となります。腫瘍の進展範囲が周囲の他の臓器まで及んでいる患者さんでは、胸腔鏡が使用できない場合もありますが、腹部の操作は腹腔鏡で行い、少しでも患者さんの負担が少ない治療法を行っています。また、心機能や肺機能の低い患者さんでは、腹腔鏡が使用できない場合もありますが、この場合も胸部の操作は胸腔鏡で行い、少しでも患者さんの負担が少ない治療法を行っています。

 頸部は両側の小さな斜切開創から行います。正中に創を作らないことで筋肉の温存および癒着を防ぎ、嚥下障害を減らす効果があると報告されています。

 

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左図:従来の開胸、開腹術による手術創

右図:当院の手術創

 また胸腔鏡や腹腔鏡で行なう手術は視野がよく、解剖の正しい把握が可能となり、大きい皮膚切開創で行った場合に勝るとも劣らない根治性が得られると考えられます。必要な領域の郭清をきっちりと行い、他の施設と遜色ない5年生存率を得ています。

食道癌手術の年間症例数は約10-15例で、1995年以来の当院での5年生存率は、0期:100%、1期:88%、2期:67%、3期:31%、4期:19%です。

 

2.周術期管理チームによる術前準備と術後ケア(身体的・心理的サポート)

 我々の施設では、手術をうける患者さんの周辺環境をトータル的にサポートする周術期管理チームがあります。医師・看護師・理学療法士・歯科衛生士・薬剤師・事務職など多職種で構成されており、緩和・栄養サポート・嚥下機能ケアチームの代表者も参加しています。周術期管理チームは食道がんで手術予定の患者さんに対して、手術前後の対応を入院前から検討し、それぞれの専門的見地から意見交換し、計画的に介入していきます。退院後の外来まで身体的・心理的ケアを行っていきます。

 

胃癌

担当:岸 健太郎(金曜日診察)
 益澤 徹 (月曜日診察)

胃癌の治療方針 

 胃癌ガイドライン 第4版をふまえた治療選択肢を提示しつつ、症状に合わせて、低侵襲手術の導入や、化学療法との併用治療を行っています。また胃癌の手術後は食生活が変化し、体重減少が高頻度に起こります。近年では栄養サポートによる術後のケアにも力を入れています。胃癌手術は年間約120例で、病期別5年生存率は、Ⅰa期97%、Ⅰb期93%、Ⅱ期87%、Ⅲa期58%、Ⅲb期38%、Ⅳ期11%です。

<胃癌切除手術>   

当院では胃癌に対する治療として傷が小さく体の負担の少ない術式である腹腔鏡下胃切除を積極的に行なっています。

 早期胃がんに対する幽門側胃切除術において、腹腔鏡手術は開腹手術と同等な安全性が確認され広く普及しています。過去のデータと比較すると治療成績も遜色ない結果と報告されています。当院ではさらに傷が小さくなる単孔式腹腔鏡下胃切除術やより精緻な手術を目指してダビンチSiシステムを用いたロボット支援手術も行っています。

また胃全摘術や進行がんにおいても病状に合わせて腹腔鏡手術を導入しています。当院での成績では安全性・治療成績も開腹手術と同等であると報告しています1)

 手術後はstageⅡ以上を対象に補助化学療法を行っています。進行度に合わせて、多剤併用化学療法を行う場合もあります。抗がん剤併用時や胃全摘後には十分な食事がとれない場合もあります。栄養に関する相談窓口(栄養外来)も設けておりますので、ご利用ください。
<化学療法>

 進行した胃がんの治療には、手術だけでは限界があります。リンパ節転移を多く認める場合や腫瘍が大きく周辺臓器を巻き込むような場合は、化学療法(抗がん剤)を手術前に導入して癌を取り除く確率をあげる工夫をしています。また胃癌が胃壁を突き破っておなかの中に広がっている腹膜播種性転移場合や他臓器に転移している場合は手術の適応はなく、化学療法が中心となります。特に腹膜播種性転移は画像検査のみでは診断できないこともしばしばありますので腫瘍径が大きな胃癌に対しては審査腹腔鏡を積極的に導入して正確な進行度診断に用い治療に反映させています。

当科では多施設共同臨床試験に参加しており、標準治療だけでなく、先進医療や新しい有望な治療法も選択できるよう取り組んでいます。

1) (Hamabe A Comparison of long-term results between laparoscopy-assisted gastrectomy and open gastrectomy with D2 lymph node dissection for advanced gastric cancer. Surg Endosc. 2012)

 

胃癌手術における当科の特色

1. さらなる低侵襲をめざして

 開腹術と同等の手術をより小さい傷で行う腹腔鏡下手術(小さい穴をあけて行う手術)は、術後の痛みや体への負担を減らし、早く家庭や社会に復帰できるといわれています。当院では胃癌に対する治療として腹腔鏡下胃切除を早くから導入しています。胃を2/3程度切除する腹腔鏡下幽門側胃切除術や技術的に難しく限られた施設でのみ行なわれている腹腔鏡下胃全摘術も行なっており、手術件数は年々増加しています。

腹腔鏡下胃切除術は、腹腔鏡というカメラでみながら5~10mm程度の穴から器械をいれてお腹の中の操作を行なう手術です。ハイビジョンカメラによって、拡大された画像が得られ、繊細かつ確実な手術を行うことができます。一番大きな傷は、切り取った胃をお腹の中から取り出したり、消化管再建(胃と腸をつなぎあわせ、食べ物の道筋をつくること)を行ったりするための4~5cmくらいの傷になります。

 最近では、さらなる低侵襲手術をめざして体腔内吻合法(お腹の中で消化管再建を行うこと)を行っています。通常上腹部(お腹の上のほう)につけていた4~5cmの傷を、おへそにつけることで、傷を2~3cmまで小さくすることができます(取り出す胃の大きさによります)。傷の大部分がおへその中に隠れるので、傷痕が目立たず、痛みも少ないと考えています(写真)。
この方法は、幽門側胃切除術、胃全摘術ともに行なうことができます。

同様の手術をダビンチSiシステムを用いたロボット支援手術でも行うことができます。ロボットによる精緻な動きが術後合併症をさらに減少させると期待されています。

 

 2. 腹腔鏡下胃全摘術

  腹腔鏡下胃切除術は急速に普及していますが、その歴史はまだ浅く、ガイドラインで推奨されているのは早期がんに対する幽門側切除のみです。本術式は、幽門側切除と比べても高度な技術を要するため、全国的にも限られた施設でのみしか導入されておらず、幽門側切除にくらべ手術件数も多くありません(左図)

 しかし当院では手術方法、消化管再建法を定型化することで、簡便かつ根治性を損なわないよう手術を行っており、腹腔鏡下胃全摘術を年間約25例を安全に施行しております。今後、導入施設の増加とともに、腹腔鏡下胃全摘術の安全性が確証されていくと予想されます。

 

3. 創の目立たない 単孔式腹腔鏡下胃切除術

当院では胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術を年間約120例程度を安全に行っており、当院での標準治療となっています。

 

早期がんに対しては、低侵襲性、整容性(見目の美しさ)をさらに追求し、胃癌に対する単孔式腹腔鏡下胃切除(Single Incision Laparoscopic Gastrectomy:SILG)を行っています。従来の腹腔鏡下手術では5-6か所の穴から手術を行い、5 cm位の小さい創を加え行うのですが、単孔式腹腔鏡下手術(SILG)は切り取った病変(胃癌)を取り出すための1つの穴からだけですべての手術技行います。

 

手術の内容-つまり、胃癌に対する処置は、大きくお腹を開け開腹手術をしても、小さい創と幾つかの穴から行う従来の腹腔鏡手術をしても、このSILGと呼ばれる小さい創(キズ)一つの手術をしても同じです。更に、おへそに創を持って来ると、傷跡はほとんどおへそに埋もれて見えません(右図)。中にはホントに手術をしたの?といわれる患者さんもいるほど、極めて「美容的に」素晴らしい手術です。術後1週間程度で退院も可能です。 この手技は非常に高度の技術を必要とします。普通の病院では中々できません。

当院は従来から低侵襲で体に優しい内視鏡手術の沢山の経験と高度の技術を持っていましたが、更に胃切除やリンパ節郭清手技、体腔内吻合の技術を高め、多くの患者さんに、より安全で、より確実にこの術式を受けて貰えるようになっています。この魅力的な手術をすると良い適応も決まっています。詳細をお知りになりたい方は当院セカンドオピニオン外来(直通:06-6775-2863、メール:shoukai@oph.gr.jp)を受診されるか、または外科外来(代表:06-6771-6051)までご連絡ください。

  

4. 胃がんに対する手術支援ロボット(ダビンチ:DaVinci Siシステム)

 

 

手術支援ロボット(ダビンチシステム)は、腹腔鏡下手術の利点をより高める手術支援機器で、ハイビジョン画像の三次元化によって細かい繊維や血管が認識できるようになりました。また多関節を持つロボットアームにより、通常の直線的な動きしかできない腹腔鏡手術では届きにくかった部位でも容易に操作が可能となります。またロボットアームは、手の動きを縮小したスケールで忠実に再現します。よって手ぶれなく繊細な手術が可能となりました。当院では、平成26年3月より胃がんに対するダビンチシステムを用いた腹腔鏡下胃切除術を臨床試験として導入し、その有効性・安全性を評価しつつ施行しており、現在まで安全に施行されています。

 当院では最新の手術機器を導入し、安全かつより低侵襲な手術をこころがけています。ダビンチシステムを用いた手術をご希望になられる方は、当院外科外来(代表:06-6771-6051)まで御連絡ください。

 

 

大腸癌

担当:赤松 大樹(金曜日診察)
  鄭 充善 (月曜日診察)
  鈴木 陽三(水曜日診察)

 

  大腸癌手術は年間約220例で、手術数は増加傾向にあります。治療成績に関しては過去約15年間の結腸癌と直腸癌の病期別5年生存率は別図をご覧ください。低侵襲治療に力をいれる当科では、大腸癌手術の約95%を腹腔鏡下に行っています。創は3〜5cmと小さく創痛も軽度で、早期退院が可能です。術後の経口摂取開始は平均で術後2日、術後在院日数は術後8日となっています。進行大腸癌に対しても腹腔鏡手術で十分なリンパ郭清を伴う根治手術が可能で、積極的におこなっています。また結腸癌のほぼ全例と上部直腸癌の症例で最先端の単孔式腹腔鏡手術を行っており、大腸癌の単孔式腹腔鏡手術の手術件数は全国一となっています。この術式では、臍の中に2.5 cm程度の切開を加えて、その1箇所の創からすべての手術操作を行います。そのため術後は傷跡が臍の中に隠れるためほとんど目立たなくなります。また当院では以前に開腹手術を受けたことがある患者さんに対しても腹腔鏡手術を標準術式としています。

 

 

肝臓

担当:種村 匡弘(水曜日診察)
古川 健太(火曜日診察)

 

 当科における肝臓領域手術症例数(2010年1月~2014年12月)

 当科では、原発性肝癌、転移性肝癌などの肝腫瘍に対し肝切除術を実施しております。肝切除術は術中・術後出血、術後肝不全などを併発する可能性のある手術です。当院での手術は肝胆膵高度技能指導医の執刀の元、安全に切除できる様に体制を整えています。さらに、術前、術後の患者様の管理につきましても肝臓専門医の消化器内科と緊密に連携し安全に手術を受け、退院していただけるよう努力しております。

また、近年導入されております腹腔鏡下肝切除術も積極的に実施しており、安全に施行しております。

肝切除についての質問、手術適応、術式選択についての質問は、外科の肝胆膵専門医にお聞きください。

 

術式別症例数(2010年1月~2014年12月)

 

肝癌

 肝癌には、肝臓から発生する原発性肝癌と、他臓器の癌からの転移性肝癌があります。原発性肝癌は、肝細胞から発生する肝細胞癌と胆管細胞から発生する胆管細胞癌(肝内胆管癌)があり、肝細胞癌が95%を占め、胆管細胞癌は稀です。肝細胞癌は、B,C型ウィルス性やアルコール性慢性肝炎や肝硬変を主体とした障害肝を背景として発生することが多いのが特徴です。

肝切除術の対象となる疾患には下記のようなものがあります。

①原発性肝癌(肝細胞癌、胆管細胞癌、混合型肝癌など)

②胆道癌(肝門部胆管癌、胆嚢癌、上・中・下部胆管癌など)

③転移性肝癌(大腸癌からの肝転移など)

④良性腫瘍(肝血管腫、肝線種、肝嚢胞 など)

⑤肝膿瘍 など

 

原発性肝癌(肝細胞癌)の診断と治療

 当院では、「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン」の肝細胞癌サーベイランス・診断アルゴリズムに従い、診断やフォローアップを行っています。肝細胞癌と診断された場合には、「原発性肝癌取扱い規約」の進行度分類、肝障害度を総合的に評価し、「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン」の肝細胞癌治療アルゴリズムにしたがって治療方針を決定しています。

参考資料
「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン」肝細胞癌治療アルゴリズム 

 

「原発性肝癌取扱い規約」進行度分類

  

肝障害度

 2項目以上が該当した肝障害度をとります。2項目以上の項目に該当した肝障害度が2ケ所以上に生じる場合には、悪いほうの肝障害度となります。

 

  

 

幕内基準

転移性肝癌の治療

 転移性肝癌に対しては、原疾患(大腸癌、胃癌など)の治療指針に従い、転移巣の切除を行っています。

 

腹腔鏡下肝切除術

 肝癌に対する肝切除術は、肝臓の解剖学的理由(右肋骨の奥に存在し、背中側に固定され、非常に血流の豊富な出血しやすい臓器である)から、従来、下記のような大開腹(40cm以上の皮膚切開)を余儀なくされ、肝切除が安全に行われるようになった今日でも患者さんにとっての大きなデメリットでした。腹腔鏡下肝切除術は1991年に世界で初めて施行され、本邦では1993年に初めて施行された後、徐々に症例数が増加してきました。

 昨今の手術器具の進歩に伴い、腹腔鏡下肝切除術は、さらに安全で低侵襲な手技となり、2000年に高度先進医療、2006年に先進医療となり、2010年4月には施設に対する条件付きで保険診療として認められました。腹腔鏡下肝切除術は、開腹創を全く設けない完全腹腔鏡下肝切除術と腹腔鏡を補助的に使用し、開腹創を最小限(10~15cmの皮膚切開)にする腹腔鏡補助下肝切除術に大別されます。

 当科では、個々の症例での肝癌の部位や大きさを考慮し、手術の安全性、癌の根治度を担保することを第一に、可能な限り開腹創を小さくし、体への負担を小さくする低侵襲手術を行っています。(再肝切除または開腹歴のある患者様では、腹腔内の癒着の程度などを考慮し、手術方針を決定しています)  これまでの臨床経験で、腹腔鏡下肝切除術においては術後鎮痛剤の使用回数の軽減、入院期間短縮などのメリットがあることが示されています。

 

肝切除に適応される皮膚切開

手術創写真(完全腹腔鏡下)

 完全腹腔鏡下肝切除術では、内視鏡および鉗子の挿入ポートのみの傷となり、術後の疼痛などが顕著に緩和され、早期退院も可能になっています

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 膵臓癌

担当:種村 匡弘(水曜日診察)
古川 健太(水曜日診察)

 

はじめに  通常型膵癌とは、当院の膵切除実施状況

  膵腫瘍には、上皮性腫瘍と血管腫リンパ管腫などの非上皮性腫瘍があり、大多数は上皮性腫瘍で、外分泌腫瘍と内分泌腫瘍に分けられます。外分泌腫瘍には、漿液性嚢胞腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍、膵管内乳頭粘液性腫瘍、腺房細胞腫瘍浸潤性膵管癌が有りますが、浸潤性膵管癌が通常型膵癌です。2007年の膵癌登録報告によると、全Stage及びStage不明例を含む通常型・組織型不明の浸潤癌全症例の生存率は1年生存率が1981年-1990年の20.3ヶ月から1991年-2000年の25.7ヶ月、2001年-2004年の40.2ヶ月と飛躍的に改善していますが未だ予後不良の疾患です。

 当院では、消化器内科と密接に連携し膵癌の治療にあたっています。当科では、年間約20例の膵癌症例を手術し膵癌の根治を目指しています。

 

膵癌は、外科的切除のみで根治を目指すことは困難とされ、根治を目指した新しい治療法として術前に化学放射線療法を行い、再評価の後、膵癌の根治切除を行う治療を行っており、予後の改善、再発抑制に取り組んでいます(下記に詳細を述べています)。
さらに膵切除術にも腹腔鏡を用いた低侵襲手術にも積極的に取り組んでいます(下記術後写真参照)。

膵癌を含めた膵疾患の外科的治療についてのご相談は外科、肝胆膵外科専門医にお聞きください。

 

膵癌の正確な病期診断

 当院、消化器外科・消化器内科では、「科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン」に基づき診断・治療しています(図1)。治療方針は「原発性膵癌取扱規約」の進行度分類により変わってきます。そのため正確な病期診断が必要になります。まず臨床症状、膵酵素/腫瘍マーカー/危険因子、超音波検査を行い、次にCTおよびMRI(MRCP)を施行し、これらの画像診断所見から質的診断が可能であれば膵癌と診断しています。

 さらに診断が困難である場合には、内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)、超音波内視鏡(EUS)、PET-CTを施行しています。その上で、各種の画像検査により膵腫瘤の質的診断がつかない症例で、治療開始にあたり病理診断が必要な場合には、確定診断法としてERCP下膵液細胞診・組織診、超音波内視鏡下生検(EUS-FNA)、などを施行しています。

 

 

膵癌の治療

「科学的根拠に基づく膵癌診療ガガイドライン」の膵癌の治療選択(図2)に基づき、StageI, II, IIIでは外科切除を行います。手術療法は、膵頭十二指腸切除(図3もしくは膵体尾部切除に加えて、術後QOLを損なわない範囲のリンパ節郭清と、腹腔動脈・上腸間膜動脈周囲神経叢の半周郭清を施行しています。

図2 「膵癌診療ガイドライン」膵癌の治療選択 (当院の治療方針に基づき改変しています)

 StageIVaは切除可能、切除不能に分かれますが、切除範囲外の動脈浸潤の無い3分岐までの門脈浸潤、腹腔動脈合併切除で切除可能な動脈浸潤は切除可能です。

 切除可能StageIVaでは門脈合併切除など行い外科的切除を施行しています。一方、切除範囲外の動脈(Ceriac A, CHA, SMA)浸潤は切除不能です。門脈浸潤などを伴う局所進行切除不能膵癌に対しては、化学放射線療法を施行するか、ゲムシタビンやTS-1による全身化学療法を施行し、切除可能と判断された場合は速やかに外科的切除を施行しています。切除可能の判断に至らなかった症例では、全身化学療法を継続して施行しています。

 膵癌に対する根治手術は高難度手術であり、手術関連死は1~3%程度と報告されており、肝胆膵手術の専門医が在籍する施設での治療が勧められています。当院では、肝胆膵高度技能指導医の指導医が在籍し、日本肝胆膵外科学会高度技能修練施設に認定されており、安心して治療を受けていただくことが可能です。

 

 外科的切除がなされた後は、術後補助化学療法を約6か月追加しています。術後補助化学療法は、日本で施行された無作為比較試験(膵がん切除後の補助化学療法における塩酸ゲムシタビン療法とS-1療法の第Ⅲ相比較試験Randomized phase III trial adjuvant chemotherapy with gemcitabinevs. S-1 in patients with resected pancreatic cancer)でTS-1による術後補助化学療法群で有意に無再発生存期間を延長したことから、TS-1 80-120mg/日4週投与2週休薬を基本に4コース6ヶ月間施行しています。しかし、下痢などの消化器症状が強く発現する患者さんではゲムシタビンを用いた補助療法に変更することもあります。

 

 StageIVbでは、すでに遠隔転移を持つ膵癌です。全身状態が良好であれば、ゲムシタビンやTS-1による全身化学療法を施行しています。残念ながら全身状態が不良で治療が困難な場合は、除痛など緩和療法を行うことになります。ゲムシタビンやTS-1と他の化学療法剤を併用する事により生存期間を延長できるかは、臨床試験が多数行われており、いくつかの期待される薬剤が有りますが、現在のところは臨床試験の段階です。

 ゲムシタビンと分子標的治療薬との併用については、上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ阻害剤であるエルロチニブ(Erlotinib)との併用で僅かですが生存期間の延長が証明されています(J Clin Oncol.;25(15):1960-6, 2007)。エルロチニブ(タルセバ)は、使用施設が限定されていますが、当院では使用可能です。

 

図3 膵頭十二指腸切除術

 

膵癌に対する新しい治療:IMRTを応用した術前化学放射線療法―患者様に優しい膵癌根治療法の確立を目指して―

これまで、がんに放射線の量(線量)を集中させる様々な方法が追究されてきました。しかしながら従来の方法では、がんと感受性の高い正常組織(小腸、十二指腸、骨髄など)が複雑に近接する場合、がんだけに十分照射することはできませんでした。特に、膵臓は後腹膜臓器であり、膵周囲には胃、十二指腸、腎臓、大動脈など放射線照射に対する感受性がやや高い重要臓器が膵臓を取り囲んでいます。これを克服するため強度変調放射線治療(Intensity Modulated RadiationTherapy:IMRT)が開発されました。IMRTとは、最新のテクノロジーを用いて照射野内の放射線の強度を変化(変調)させて照射を行なう方法のことを指します(当院で使用している実際の放射線照射装置:図1)。 

【図1】

IMRTを使えば、がんの形に凹凸があってもその形に合わせた線量分布が作ることができます(従来の放射線治療とIMRTによる線量分布の比較:図2)。

【図2】 

IMRTは、日本でも2000年頃より開始され、2006年には先進医療に認められました。当院では、2010年よりIMRTを導入し、前立腺癌、脳腫瘍から治療を開始し、順次、頭頸部癌、骨盤内臓器での癌に対する放射線治療へと適応を拡大してきました。2014年から膵癌に対する術前放射線化学療法に応用し、切除率の向上、長期生存率の延長を目指し、癌患者さんに優しい治療を行っています(当院の術前化学療法の治療スケジュール:図3)。本治療の適応、治療効果、治療スケジュールなど詳しい情報は、外科、肝胆膵専門医にお聞きください。

【図3】 

  

下記に、当科にてIMRTを用いて術前放射線化学療法を行い、膵癌根治切除できた症例のCT、PETをお示しします(図4)。
 【図4】

 

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)とは

 

 膵嚢胞には炎症性嚢胞と非炎症性嚢胞があり、非炎症性嚢胞の多くは腫瘍性嚢胞です。腫瘍性嚢胞の内、漿液を産生する漿液性嚢胞腫瘍は、ほとんどが良性腫瘍です。一方粘液を産生する嚢胞性膵腫瘍は、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と粘液性嚢胞腫瘍(MCN)に分類されます。膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は、当初は良性の膵管内乳頭粘液性腺腫ですが、時間経過とともに、膵管内乳頭粘液性癌、膵管内乳頭粘液性腫瘍由来浸潤癌と変化していきます。

 

膵管内乳頭粘液性腫瘍の治療

 IPMN/MCN国際診療ガイドラインでは、粘液性嚢胞腫瘍は悪性の可能から全例切除適応とされており、当科でも外科的に切除しています。

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は主膵管型、混合型は原則切除とし、分枝膵管型は腫瘍径3cm以上、壁在結節あり、主膵管径7mm以上を切除適応としています(図4)。

 

図4 IPMN治療方針(IPMN国際診療ガイドラインに準拠)

外科的切除の方法ですが、膵頭部側(十二指腸側)の腫瘍は膵頭十二指腸切除を施行しています。膵尾側(脾臓側)の腫瘍は、浸潤癌の場合は、通常型膵癌と同じく郭清を伴う膵尾側切除を施行していますが、浸潤癌で無い膵体尾部腫瘍の場合は、低侵襲で整容性にも優れた腹腔鏡下膵体尾側切除を施行しています。術式の適応・選択については外科、肝胆膵外科専門医にお聞きください。

 

図5 腹腔鏡下膵尾側切除の手術創

 

膵神経内分泌腫瘍とは

  神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor; NET)は、消化管や内分泌組織に広く分布する神経内分泌細胞由来の腫瘍です。膵臓では膵ランゲルハンス島と呼ばれる部分があり、様々な膵内分泌ホルモンを産生しています。その様な膵ランゲルハンス島の細胞由来の腫瘍が膵内分泌腫瘍です。
 インシュリンを産生するインシュリノーマ、ガストリンを産生するガストリノーマ、グルカンゴンを産生するグルカンゴノーマ、ソマトスタチンを産生するソマトスタチノーマなど、ホルモンによる症状を起こす症候性膵島腫瘍と、ホルモンによる症状を起こさない無症候性膵島腫瘍が有ります。無症候性膵島腫瘍には、非機能性膵内分泌腫瘍も含まれます。発生率は年間100万人あたり約10例程度と報告されています。また多発性内分泌腫瘍症(MEN)に合併する場合もあり、全身検索も必要です。

 

膵神経内分泌腫瘍の診断

 

 ホルモンによる症状を有する機能性膵内分泌腫瘍である、ガストリノーマ(Zollinger-Ellison症候群)、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ソマトスタチノーマ、VIP腫瘍(Verner-Morrison症候群)、GRF腫瘍(Growth-hormone-releasing factor)、ACTH産生腫瘍など機能性膵内分泌腫瘍の診断は、産生するホルモンの高値による診断します。
 2010年のWHO分類により、膵・消化管神経内分泌腫瘍は、Neuroendocrine Neoplasm(NEN)と総称され、核分裂像数(10HPF当たりの核分裂像数)とKi-67指数(細胞増殖関連抗原Ki-67に対するMIB-1抗体標識率)からG1~G3に悪性度分類され、特にG3は神経内分泌癌(Neuroendocrine carcinoma; NEC)とされています。
局在診断には、一般に多血性腫瘍である事が多いことから、造影CTが有用です。

 

膵神経内分泌腫瘍の治療

 ホルモン過剰による症状に対する治療と悪性腫瘍に対する治療の両面から治療を考える必要があります。インシュリノーマ以外は非機能性膵内分泌腫瘍も含めて悪性の可能性が高く、悪性腫瘍に対する治療としては、外科的切除が第一選択となります。悪性腫瘍に対しては膵癌に準じて手術を行うことになりますが、低悪性度腫瘍で腫瘍の位置が膵体尾部であるものに対しては、低侵襲手術である腹腔鏡下膵切除術を施行しております。
 肝転移に対しては、可能で有れば外科的切除を施行しています。外科的切除が出来ない場合は、多血性腫瘍である事が多い事から経動脈的化学塞栓療法(TACE)が選択されます。ソマトスタチン受容体(Somatostain receptor type 2:SSTR2)陽性の場合には、保険適応に従いソマトスタチンアナログを使用しています。また分子標的治療薬である、mTOR(mammalian target of rapamycin)阻害剤のエベロリムスは、進行性膵内分泌腫瘍患者の無増悪生存期間を延長させたと報告されており、当院でも使用可能です。

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