メインイメージ

ホーム > 診療体制のご紹介 > 呼吸器内科 > 診療方針 > 気管支喘息について

気管支喘息について

1.気管支喘息と慢性肺気腫(COPD)

Q:どのような症状が出たら、「喘息かもしれない」と考えるべきなのでしょう?

A:夜になると咳や痰が増える。じっとしているのに喉や胸で「ヒューヒュー」「ゼエゼエ」というような音(喘鳴)が聞こえる・・・というように「安静にしていても急に咳や痰、息苦しさの症状が悪化する」場合、 気管支喘息を疑います。

 

Q:どのような症状が出たら、「肺気腫(COPD)かもしれない」と考えるべきなのでしょう?

A:じっとしていると苦しくないのに、坂道を歩いたり、階段を上ると息切れがする。最近、家族と同じスピードで歩けない。体を動かすと肩で息切れする。時々、歩いた後で喉や胸で「ヒューヒュー」「ゼエゼエ」というような音(喘鳴)が聞こえる。このように「安静にしていると大丈夫だが、動くと息切れ症状が悪化する」場合、慢性肺気腫(COPD)を疑います。

 

Q:喘息と肺気腫(COPD)の違いを教えてください。

A:喘息の特徴は、「発作が起こらなければ肺の機能は正常だが、発作を起こすと肺の機能が低下して、息が苦しくなってしまう」という点です。また、発作は安静にしていても起こりえます。発作を起こさなければ、機能的に健康な肺です。 発作による肺の機能の低下を予防することが喘息治療の基本です。
 他方、慢性肺気腫(COPD)の特徴は「じっとしていれば苦しくないのに、ある程度、体を動かすと息切れが出てくる」という点です。肺気腫(COPD) は、大半の場合は喫煙によって肺が破壊され、肺の老化が急速に進んだ状態です。肺の慢性的な機能低下が原因です。
既に老化した肺を若返らせることは、今の医療では不可能です。しかし、肺の老化の進行を予防して、残された肺の機能を有効に活用し、息苦しさによる日々の生活の苦痛を軽減することはできます。これが肺気腫(COPD)治療の基本です。

 

Q:では、喘息と肺気腫(COPD)は全く別の病気なのですね?

A:慢性肺気腫(COPD)の患者さんの中には、喘息発作を併発する方もおられます。つまり、日常の肺気腫(COPD)による息切れ症状に、発作による安静時の息苦しさも加わる状態です。この場合は、喘息と肺気腫(COPD)、療法の治療が必要になります。

 

2.気管支喘息のメカニズム

Q:なぜ、喘息にかかるのですか?

A:喘息が発症する仕組みは複雑です。 その人の遺伝による体質に加え、様々な環境因子(アレルゲン、大気汚染、喫煙、感染、刺激物の吸入や摂取、運動)の刺激を受けて、次第に気管支の粘膜に炎症(ただれ)が発生します。 この炎症(ただれ)によるダメージが溜まってくると、気管支の粘膜は過敏反応をもつようになります。このような気管支粘膜は、刺激を受けると多数の化学物質を分泌します。すると、気管支の粘膜がむくんだり(浮腫)、気管支の壁が収縮したり、また痰が湧いてきたりします。

 

 

また、喘息発作時には下図のように気管支の中が細くなっています。このような気管支の中を空気が通過するには、大変なエネルギーを必要とし、また、ヒューヒューと喘鳴を伴います。 この炎症と、気管支の狭窄を改善すること、そして起こさないようにすることが、喘息治療の原則です。

 

 

Q:では喘息の予防策はありますか?

A:喘息を既に発症した方の最大の予防は投薬によるコントロールです。投薬以外では、悪化の引き金になると思いあたる原因があるのなら(アレルゲン、大気汚染、喫煙、感染、刺激物の吸入や摂取、運動)、できる限り接触しないことです。あるいは接触する前に予防的に服薬をすることです。

 

3.気管支喘息の治療

Q:私は喘息です。夜中に時々、座っていないと息が苦しくなる発作がありますが、病院でもらった吸入をすれば治まります。定期的な投薬を受けるのはめんどうです。発作の時に吸入をすればいいですよね?

A:よくありません。発作が年に1回あるかないかの程度なら、それでいいと考えます。しかし、月に何回もそうした発作があるようなら、きちんとした治療を行うべきです。喘息を不安定なまま放置すると、重症発作を起こす危険性が高くなります。重症発作は命を落とすこともある危険な状態であることを知ってください。

 

Q:危険な発作とはどのような状態ですか?

A:危険な発作では呼吸状態が非常に悪化しています。気道の狭窄が激しい上に、非常に粘っこい痰が増え、気道がつまりかけます。このため、酸素欠乏が著しく、最悪、呼吸が止まることもあります。また、横にはなれず、座っていないと息が苦しいという起座呼吸や、呼吸悪化により意識がもうろうとするなどの状態に陥ります。この病状が改善しなければ生命に関わり、時には人工呼吸を行わねばならないこともあります。 喘息が不安定な方は、きちんと治療を行い、病状を安定させれば、このような危険な発作の危険を大きく減らすことが可能です。

 

Q:喘息発作が出たら、即入院ですか?

A:大半の場合は外来で治療が可能です。しかし、外来での治療でコントロールが不良であったり、上記のような大発作の時には入院となります。

 

Q:成人喘息は治りますか?

A:小児喘息では7割程度の方で治癒(その後、発症しなくなる)する可能性があります。しかし、成人してからの喘息は、今の医療で完璧な治癒はしないと考えられています。
喘息の原因は、複雑な要因によって起こる気道の炎症(ただれ)であると説明しました。この炎症は一時的に起こったものではなく、長い年月をかけて生じてきた末に起こったものです。つまり、「気管支の構造や性質が、発作を起こしやすく変化してしまって」いるのです。医学用語でリモデリングと言います。現在の医療では、投薬で悪化を抑えることはできても、既に起こったリモデリングの変化を完全に消し去ることはできないだろうと考えられています。

 

Q:では、一生、喘息で苦しむのですか?

A:治療が不十分であれば、そうなってしまうかもしれません。しかし、治療を行えば、「ほぼ治癒した」状態まで回復し、長く安定していれば投薬を終了することも可能であると私たちは考えます。喘息という病気をよく考え、適切な治療を行う努力を続けられることをお勧めします。

 

Q:喘息の治療法を教えてください。

A:喘息では気管支の炎症狭窄が起こっていると説明しました。この2つの症状を改善することが、喘息治療の基本です。このため、喘息に投与する薬は2種類に大別されます。
(1).抗炎症剤:気管支の炎症(ただれ)を改善する薬です速効性は劣りますが、喘息を起こしにくくする体質に改善します。吸入ステロイドや抗アレルギー剤などが含まれます。
(2).気管支拡張剤:発作時に収縮・狭窄した気管支をリラックスさせ、広げる薬です。速効性があり、発作時に必要です。テオフィリン製剤やβ2刺激剤が含まれます。

 

Q:治療法はどのようにして選んでいるのですか?

A:喘息に対する治療のガイドラインが作成されています。主なガイドラインには,日本アレルギー学会が作成したものと、WHOと米国の学会が協同して作成した GINA2006というガイドラインの2種類がよく使用されています。ここには日本アレルギー学会作成のガイドラインを示します。
喘息発作の頻度、重症度(酸素欠乏症を伴うほどの発作かどうか)によって、病状を4段階に分けています。ステップ1から4へと順次、症状が重くなっていきます。この病状に併せて、投薬の種類を増やしていく、ステロイドの投与を増やしていく内容になっています。

 



ステップ1~4まで、吸入ステロイドが長期管理の核になっています。

 

Q:咳や痰はまだ少し残っていますが、最初に比べるとずいぶんとよくなりました。服薬をやめてもいいですよね?

A:先ず、咳や痰が少しでも残っているということは、気道に炎症が残っているということです。つまり、喘息は軽くなっただけで、まだくすぶっています。今後も症状が悪化しやすいと思われます。喘鳴がなくても、咳・痰の症状が残っている以上、服薬は継続すべきと考えます。

 

高齢者喘息患者について

Q:喘息は若い人の病気で、高齢者には出ないですよね?

A:高齢者にもよく認めます。むしろ、高齢化社会を迎えて、65歳以上の方の占める割合は増えています。ある時期に当院で調査したところ、当時通院されていた喘息患者さん127名の内、高齢者は66名でした。
 

 

Q:高齢者の喘息は若い人に比べてどこか違うのですか?

A:65歳以上の高齢者喘息は、若年者と比べ合併症(喘息以外の病気)が多いという点が最大の特徴です。このため、治療は喘息のことだけを考えているわけにはいきません。合併症の治療も含めた治療が必要となります。

 

また、高齢者になると、喘息の症状があっても患者さんが自分で症状を訴えることが少なく、過少評価される危険性もあります。

 

Q:合併症にはどんなものがありますか?

A:合併症の内訳では、心血管系疾患が最も多く、また、高齢者ほど、肺気腫(COPD)と気管支喘息の合併が多い傾向が認められています。複数の合併症を持っている患者さんも多くおられました。

 

 

Q:高齢者喘息の治療にはどんな特徴がありますか?

A:高齢者の場合も使用する薬は基本的に変わりません。肺気腫(COPD)の合併も多いので、肺気腫(COPD)に使用する抗コリン剤という種類の吸入剤を併用することも多い点が特徴の一つです。
高齢者の方が苦労されるのは、若い方に比べて
(1).薬の使い方がわかりにくい、あるいはわかっていても上手にできない (2).薬の副作用が出やすい ・・・この2点です。
喘息の治療では吸入療法で長期管理することが、病気のコントロールの点からも、副作用の点からも望ましいです。しかし、高齢者では吸入器の使い方がわからなかったり、わかっても上手に吸入できないことが珍しくありません。また、服薬を忘れてしまうことも度々です。薬の有効性も大事ですが、その人に使いやすい薬を選ぶことが大切です。

 

Q:服薬で注意することはありますか?

A:高齢者に合併症が多いことを説明しました。合併症があるため、様々な薬を既に服用していることが多いのです。その薬の種類によっては喘息が悪化するかもしれないし、逆に喘息の薬によって合併症が悪化するかもしれないので、注意が必要です。
例えば、慢性心不全の治療として用いられるβ遮断薬や、眼圧亢進に対するβ遮断点眼薬は喘息を悪化させる可能性があります。 また、高齢者喘息では抗コリン剤吸入を用いることも多いのですが、この薬は男性疾患である前立腺肥大の症状(おしっこの回数が多かったり、おしっこが出にくくなったり)を悪化させることがあります。
吸入ステロイドの副作用である嗄声(声がかすれること)も、若い方に比べると出やすいようです。

 

アスピリン喘息:薬剤誘発性喘息

Q:薬のせいで喘息発作が出ることがあるそうですが?

A:解熱鎮痛剤(痛み止め)を飲んだところ、喘息発作が出ることがあります。米国で代表的な解熱鎮痛剤がアスピリンであるため、アスピリン喘息と通称されていますが、アスピリン以外の鎮痛剤なら絶対にだいじょうぶということではありません。 なぜ、こうした解熱鎮痛剤で喘息発作が引き起こされるのかはまだわかっていません。

 

Q:アスピリン喘息とはどんな症状ですか?

A:例えば、感冒・歯痛時など、解熱鎮痛剤を投与された後に喘息発作が生じた場合、アスピリン喘息である可能性があります。内服だけでなく、腰痛などに使用される消炎鎮痛の湿布薬でも起こりえます。 典型的な症状は、原因となる薬を服用後、数分~30分位で、鼻汁、鼻づまり、眼の充血、顔の紅潮などの症状が出現し、その後に喘息発作を引き起こすというものです。鼻茸・慢性副鼻腔炎の合併が多いと言われます。

 

Q:アスピリン喘息の原因になるのは解熱鎮痛剤だけですか?

A:薬以外に食品の着色料、食品や薬剤の添加物などが原因になることもあります。アスピリン喘息の場合、喘息の治療に使われるステロイド製剤で起こることもあります。アスピリン喘息が疑われる場合は、これを起こしにくいタイプのステロイド製剤を使用します。

top