医療センター

顔面神経・難聴センター

診療科のご紹介(診療内容や当院での特徴的な取り組み、得意分野など)

当院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科では、高度の専門性を有した顔面神経・難聴センターを設置しています。
顔面神経麻痺(顔表情の麻痺)や急性感音難聴(突発性難聴・特発性難聴など)は、ある日突然に発症することが殆どです。しかし発症早期に適切な治療が受けられないと、取り返しのつかない事態を招くことが多々あります。いずれの疾患もステロイド治療が第一選択となりますが、その使い方や診断・追加治療に関して明確な信念がある施設は少ないのが現状です。当センターでは発症から受診日までの日数に応じて、独自のアルゴリズムを作成して治療にあたっています。

特色

  • 顔面神経麻痺の分野では、関西唯一の専門施設としての役割を担っております。発症早期の麻痺程度の診断(=麻痺スコア:専門家でも実はこの判定のバラツキは大きい)、初期治療(ゴールデンタイムといわれる7日以内の保存的治療)のみならず、予後診断(=将来治るかどうかの診断:電気生理学的診断)、亜急性期~晩期治療(顔面神経減圧手術、神経吻合術、リハビリテーションなど、様々な時期に即した診断・治療が可能です。
  • 急性感音難聴(突発性難聴・特発性難聴)の診断・治療も得意としています。急性感音難聴に関しては、松代の前赴任先である大阪労災病院 奥村新一 前部長の治療方針を踏襲しています。多忙な大阪市民にも受け入れられる治療内容に修正して、治療アルゴリズムを構築しています。
  • 真珠腫性中耳炎・慢性中耳炎・耳硬化症など伝音難聴に対する耳科手術(鼓室形成術・鼓膜形成術・アブミ骨手術)や完全聾に対する人工内耳植え込み術などを得意としています。全ての症例に全身麻酔が可能であり、できる限りショートステイ手術を心がけております。
  • 耳鼻咽喉科・頭頸部外科専属の言語聴覚士が常駐しており、各種聴覚検査・補聴効果判定・顔面神経麻痺リハビリテーション治療などを実施しております。

主な対象疾患

  • 顔面神経麻痺(急性期・亜急性期・晩期)、陳旧期の顔面神経麻痺後遺症、顔面神経腫瘍(神経鞘腫) 治療内容・方針
  • 突発性難聴・特発性難聴などの急性感音難聴
  • 慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎・耳硬化症など伝音難聴疾患、中耳腫瘍、外耳腫瘍

治療方針

顔面神経麻痺

発症早期の場合には、すぐに入院していただきステロイド大量点滴と抗ウイルス剤内服を併用する治療法をお勧めしています。発症7日目までに治療を開始できた顔面神経麻痺の治療成績は、ベル麻痺:95.1%、ハント症候群:86.8%、無疱疹性帯状疱疹(ZSH):83.3%、と極めて良好な治療成績を収めています。発症7日目~10日目の電気生理学的検査(ENoG・NET)で治りが悪いと判断された場合には、即座に追加治療を行うアルゴリズムで対応しています。①顔面神経管開放術(発症3ヶ月まで)や②ステロイド治療の2コース目(発症3週まで)などの追加治療を実施することで、治癒率の改善に努めています。
外科的手術である顔面神経減圧手術は、年間20症例以上と日本トップクラスの治療実績があります(日本全国では200症例程度:日本耳鼻咽喉科学会 全国調査より)。この手術は麻酔科・手術室の理解が必須ですが、幸い全面的な協力体制を頂けております。当院では予後不良と判定された数日~1週間以内に準緊急手術が組める土壌を構築しております。

突発性難聴

発症7日目程度の病初期には、ステロイド漸減点滴療法を適応しています。この治療は外来で実施可能ですが、糖尿病などの合併症がある場合には入院治療になってしまうことをご了解下さい。ステロイド治療で改善しない場合や発症10日以上経過している場合には、できる限りすぐに入院していただき、デフィブラーゼ隔日点滴を実施しています(入院治療は大阪労災病院の治療方針に準じる)。

※デフィブラーゼにつきましては、薬剤の在庫状況により実施できない場合がありますので、ご了承ください。

慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎・耳硬化症の耳科手術

当院は麻酔科医師数が豊富ですので、全ての患者さんに安全かつ無痛の全身麻酔での手術が可能です。当センターでは、真珠腫性中耳炎に対しては段階的鼓室形成術を基本として治療しています。何かと多忙な方に適したショートステイ手術(術後2・3日での退院)にも応じています。慢性中耳炎に対しては、穿孔と難聴の状況に応じて、接着法(湯浅法)・鼓膜形成術・鼓室形成術を選択しています。

専門外来について

火曜日と水曜日の午前1診で松代が担当しています(受付:午前9時~11時)。しかし当センターが対象としている疾患は殆どが緊急疾患ですので、専門外来にかかわらず(月)~(金)まで随時対応するようにしております。既に他施設を受診している場合には、前医の紹介状などをお持ち頂きますようお願い致します。
ゴールデンタイム(発症10日以内)を過ぎた場合には、(火)午後にセカンドオピニオン外来で個別に丁寧に対応することも可能です。

ご紹介くださる先生方へ

当センターは、お陰様を持ちまして他府県の先生方からもご支援を賜っております。治療開始までの時間が非常に大事な疾患を扱っておりますので、妥協を許さず精力的に取り組んでおります。受診当日に的確な診断を行い、発症からの時期に即した適切な治療を提供致しております。セカンドオピニオンも含めて、ご活用頂ければ幸いに存じます。
当センターが主に対象としている顔面神経麻痺や突発性難聴などの急性感音難聴は、発症日から治療開始日数までが問題となる緊急疾患ですので、むしろ地域医療連携センターを介さない紹介を随時お受け致しております。従って火曜日・水曜日の専門外来(松代診)にこだわることなく、患者さんの視点から、できる限り早急にご紹介頂けましたら幸いに存じます。
一方、緊急性を要さない伝音難聴疾患に関しては、地域医療連携センター(06-6775-2863、8:30~17:00)までご連絡頂ければ幸いに存じます。ご面倒おかけ致しますが、何卒宜しくお願い申し上げます。
当院での治療が一段落すれば、逆紹介させていただきます。治療の効果を確認して頂いた上で、引き続きご加療頂けますと幸いに存じます。

診療・検査・手術等の実績

耳科手術実績(手術室利用件数) 2009年度 2010年度
鼓膜形成術 3 0
鼓室形成術(乳突洞削開術を含む) 49 57
顔面神経減圧手術 29 36
舌下神経-顔面神経吻合術〔晩期〕 1 2
内リンパ嚢開放術 1 0
鼓膜チューブ留置術(外来実績は除く) 14 9
  総数 97 104
顔面神経麻痺の治療実績 2009年度 2010年度
保存的治療症例〔急性期:ベル麻痺・ハント症候群・外傷性〕 141 207
顔面神経減圧手術〔亜急性期〕 29 36
舌下神経-顔面神経吻合術〔晩期〕 1 2
後遺症治療〔晩期・陳旧期〕 19 17
  総計 190 262
突発性難聴の治療実績(蝸牛型メニエル病を含む) 2009年度 2010年度
外来治療 78 116
入院治療 135 79
  総計 203 195

我々の治療内容・臨床研究データ・基礎研究データは、耳鼻咽喉科関連学会などで頻繁に報告致しております。ご参考頂ければ光栄に存じます。 参考文献