がん診療センター

肝胆膵がん

肝胆膵がんの診断と実績

肝がんの診断

一般的な肝がんの診断は右記のような流れで精密検査が行われます。腹部超音波検査、造影CT/MRI検査が主な検査となりますが、造影剤の使用できない患者さんや、非典型的な場合など、オプション検査として造影超音波検査や肝腫瘍生検を行うことがあります。
肝がん患者さんは、その背景にウイルス性肝炎が存在する患者さんが多いですが、近年では全国的に非ウイルス性肝炎の患者さんからも肝臓の発がんを来すことが多くなりました。
当院での2014年~2020年までに初めて肝がんを指摘された患者さんは238名で、そのうち肝疾患の背景の内訳は以下の通りでした。

初発肝がん患者数:238名(2014年~2020年)

背景肝疾患 C型肝炎 アルコール 脂肪性肝炎 B型肝炎 不明/その他
症例割合 37% 28% 15% 10% 10%

肝臓関連検査件数

  2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
腹部超音波検査(全体) 8,691 8,459 8,444 7,808 7,990
腹部造影超音波検査 74 70 87 86 88
肝腫瘍生検(転移性含む) 12 12 16 19 31

胆道がん・膵臓がんの診断

膵酵素異常や腫瘍マーカー異常、腹部症状や腹部超音波検査での異常の精密検査としてCT/MRIを行います。一般に胆道がんや膵がんの早期発見は困難です。それらで異常があれば超音波内視鏡(EUS)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)を行います。そこで必要に応じて穿刺細胞診(EUS-FNA)やERCP下の生検や擦過細胞診を行い、確定診断を得ます。
 なお、ERCPは胃切除後の症例等では通常施行が困難な場合があります。当院では、ダブルバルーン内視鏡を使用するERCP(DB-ERCP)を行っており、近隣病院より多数の紹介を受けております。  

胆膵関連検査件数

  2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
ERCP(全体) 412 367 441 611 603
DB-ERCP 29 37 36 74 48
EUS 166 187 227 215 197
EUS-FNA 43 47 42 61 67



肝胆膵がんの治療と実績

肝胆膵がん入院実績

  2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
肝臓がん 229 198 164 166 165
胆道がん 36 49 53 46 46
膵臓がん 110 89 98 86 119

肝がんの治療

肝がんは前述の通り背景に肝疾患が存在することが多く、一般的な腫瘍因子(大きさ、場所、転移有無など)のみならず肝予備能により治療方法・効果が変わります。当院ではガイドラインを参考にしながらも、可能な限り切除やラジオ波焼灼術(RFA)など根治度の高い治療をチャレンジしています。
横隔膜直下や消化管に近接する肝細胞癌では人工胸腹水下RFAを、超音波で観察困難な症例でも人工胸腹水下や造影剤併用、real-time virtual sonography:RVS(CT画像を予め超音波装置に取り込んで、観察時に同期させてエコー観察支援を行う方法)などを積極的に利用して治療を行います。脈管侵襲症例や転移症例においても放射線治療を単独ないしは薬物療法併用で行っています。
また、肝がんは治療を行っても肝内の他部位に再発が多く、(異所性再発、異時性再発)複数の治療を繰り返すことが多いです。

肝がんの治療実績

  2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
ラジオ波焼灼術(RFA) 52 36 45 58 67
腹部アンギオ(TACE 等) 174 158 126 143 111
薬物療法導入 11 22 27 28 25
手術(肝切除) 24 16 26 32 31

その他、放射線療法(SBRTなど):65例(肝内36例 肝外29 2014-2021年)



胆道がん・膵癌の治療

一般に胆膵がんは非常に悪性度が高く、可能な限り手術での根治が望まれます。当院では積極的な切除を目指しており、消化器内科と外科の連携を重要視し毎週症例検討を行い、ボーダーライン症例(通常では手術が困難と考えられる微妙な症例)でも将来の手術(コンバージョン手術)を目指した化学(放射線)療法を積極的に行っております。

胆道がん・膵がんの治療実績

  2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
胆道がん          
 手術 9 9 9 12 20
 化学療法導入 13 9 11 11 25
膵がん          
 手術 22 19 25 21 21
 化学療法導入 38 34 38 21 30

また、胆膵がんにおいては、治療開始前のみならず手術後や治療中にも胆道閉塞を来すことが少なくありません。この状態を閉塞性黄疸と呼びますが、放置していると、肝不全や胆管炎など増悪することになりますので、積極的に閉塞を解除する必要があります。可能なら内視鏡的に、必要に応じて経皮的にドレナージ術を施行します。なお、蛇足ながら、この状況は胆石の嵌頓(=詰まること)においても同様に起こりえます。

 
経皮的胆道ドレナージの施行実績 (胆石症例含む)

  2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
胆管ドレナージ(PTBD) 22 20 29 24 39
胆嚢ドレナージ(PTGBD) 25 34 40 33 17

※内視鏡的胆道ドレナージは“検査”のERCP件数に含む