診療科

脳神経外科

科の特色

 脳神経外科のスタッフは部長以下10名で、日本脳神経外科学会専門医7人(日本脊髄外科学会認定医2名と日本脳神経血管内治療学会専門医2名を含む)と非常に充実した陣容です。疾患に関しては脳腫瘍、脊髄腫瘍に代表される腫瘍性疾患と脳動脈瘤などの脳血管障害を主な治療対象としています。脳腫瘍においては聴神経腫瘍等の後頭蓋窩の腫瘍や頭蓋底腫瘍など手術困難な腫瘍も多く、各種の脳神経モニタリングやナビゲーションシステムを用いながら手術の安全性の向上に努めています。腫瘍の性状によっては放射線・化学療法を組み合わせた集学的治療も積極的に行っており、症例に応じたきめ細かな治療を心掛けています。

 また、当科では未破裂脳動脈瘤に対しても積極的に治療を行っております。動脈瘤の位置や大きさなどにより、開頭クリッピング術と血管内治療のどちらがより適しているかを検討して治療方法を決定しています。さらに当科では脳神経外科当直を毎日行っており、急性期脳卒中の緊急対応が可能です。脳梗塞の治療として頚動脈狭窄症に対するステント術などの先端医療も施行しており従来のバイパス手術とあわせた最良の治療を目指しています。当科では脊髄・脊椎疾患、末梢神経の手術治療も専門医を中心に行っており、あらゆる脳・神経系の疾患の治療が可能です。

主な対象疾患

出血性脳血管障害 クモ膜下出血(破裂脳動脈瘤、脳動静脈奇形)、未破裂脳動脈瘤、高血圧性脳内出血。脳動脈瘤に対しては基本的に開頭クリッピング術を行いますが、症例によっては血管内手術にてコイリング塞栓術を行います。
虚血性脳血管障害 脳梗塞、頭蓋内血管狭窄症、頚動脈狭窄症。脳梗塞に対しては保存的治療が主となりますが急性期には血栓溶解療法を積極的に行っています。慢性期には各種バイパス術を行うことがあります。頚動脈狭窄症に対しては症例によって血管内からのステント留置術や頚動脈内膜剥離術を行います。
脳腫瘍 良性腫瘍(髄膜腫、下垂体腺腫、聴神経腫瘍など)、悪性腫瘍(悪性神経膠腫、悪性リンパ腫、転移性腫瘍など)を治療しています。脳幹や頭蓋底などの治療困難な腫瘍に対しても積極的に手術治療を行っています。手術には各種の脳神経モニタリングやナビゲーションシステムを用いて安全性の向上に努めています。
脊椎・脊髄疾患 脊髄腫瘍全般を治療対象としていますが、髄膜腫、神経鞘腫などの硬膜内髄外腫瘍に対しては低侵襲である片側椎弓切除術により早期離床を図っています。椎間板ヘルニア・脊椎管狭窄症などの変性疾患のみならず、脊髄損傷といった外傷まで幅広く手術治療を行っています。手術に際しては、傍脊柱筋を温存する低侵襲手術を心掛けています。
外傷 急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳挫傷性血腫に対する開頭手術、慢性硬膜下血腫に対する穿頭手術を行っています。
機能的疾患 顔面けいれん、三叉神経痛、痙性斜頚などを手術対象としています。
末梢神経疾患 手根管症候群に対する手術治療を行っています。

専門外来

脳血管内治療外来

 大阪警察病院脳神経外科では、脳神経外科領域の手術治療に、低侵襲治療である脳血管内治療を取り入れています。

血管造影室

 血管内治療はカテーテルと呼ばれる細長い管を使って血管の中から手術を行います。脳動脈瘤に対しては、脳動脈瘤コイル塞栓術フローダイバーターを用いた脳動脈瘤手術を行っています。
 コイル塞栓術では、足の付け根にある大腿動脈からカテーテルを挿入し、レントゲン透視下に血管の中でカテーテルを進め、動脈瘤内に誘導し、コイルと呼ばれる柔らかく細い金属の糸を埋めます。

 動脈瘤のネック(頸部)が広い動脈瘤では、コイルが血管内に出てくるのを予防するためステントを置いて治療します。
フローダイバーターを用いた方法は、「フローダイバーター」と呼ばれる細かい網目を持つ金属製の筒を血管の中に置くことで、半年から1年程度をかけて動脈瘤を消失させる治療法です。

 近年、頚動脈エコー等で発見される機会が多くなった頚動脈狭窄症は、心疾患の合併や高齢の患者さんが多く、全身麻酔のリスクが高い患者さんがおられます。このような患者さんに対する手術では局所麻酔で手術が可能な頸動脈ステント留置術を行っています。
 また、不整脈などが原因で脳動脈の急性閉塞を伴った脳梗塞を発症した患者さんに対しては、発症後早期(6時間以内)に、症状改善を目的としたt-PA静注療法(発症4.5時間以内)に加えて、脳血管内治療による血栓回収術を行っています。

日本脳神経血管内治療学会:専門医・指導医
部長 明田 秀太

 このように脳血管内治療は、開頭手術での到達が困難であったり、全身麻酔のリスクが高い患者さんにも外科的治療が行えること、発症間もない脳梗塞に対して点滴治療で症状改善の効果が期待できなかった患者さんに対しても次の治療を提供できるなど、切らないという意味での低侵襲にとどまらない利点があります。
  当院では、従来の直達手術とここでご紹介した脳血管内治療を行い、それぞれの手術の特徴をいかして、患者さん一人ひとりに最良の医療が提供できるよう取り組んでいます。そして、医師、看護師、放射線技師が協力し、24時間体制で脳卒中患者さんの治療にあたっています。