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前立腺がん
前立腺がんの診断と実績
当院における前立腺生検の実績
近年、年間約200-250例の前立腺生検を行い、陽性率は約49%です。したがって、年間約100-150例の新規前立腺がん症例を診断しています。これ以外に、他院で診断されて当院での治療を希望されて受診される場合もあり(特にロボット手術)、年間約150例の一次治療を開始しています。
前立腺がんの治療と実績
前立腺限局がん(StageA・B)
1)ロボット支援下前立腺全摘術(RALP*)
早期(限局性)前立腺がんの治療としては、最もスタンダードな治療です。当科では、2019年9月に、最新の手術支援ロボット(ダヴィンチXiシステム※)を更新し、より低侵襲で質の高い前立腺がん治療を行っています。
(総手術数:453件 2021年6月までの実績)
手術療法は、前立腺を完全に取り除くため、根治の可能性が高い治療です。ダヴィンチ手術では、出血がほとんど無いため、術後早期に回復が可能です。また、従来の手術法(開放手術や腹腔鏡手術)に比べてより細かな手術が可能で、勃起神経や尿道括約筋の温存がより高精度で行うことが出来るため、術後の尿失禁率や勃起能が著しく改善しています(当院比)。症例によっては、従来の開放手術や腹腔鏡の手術も行っていますが、可能な方はダヴィンチによる手術をお勧めしています。当初、ダヴィンチでの手術が難しいと言われていた、緑内障の患者さんや腹部手術のある患者さんも術式の工夫にて、ダヴィンチによる手術が可能となっています。
2)放射線外照射治療(IMRT)
身体の外から、放射線を前立腺に限局して照射する方法です。治療期間は、約1ヶ月半程度です。当院では、当初1週間程度、入院して開始し、副作用などが生じないか確認しています。その後は外来通院による治療も可能です。
IMRTは、前立腺により限局的に放射線を当てることが出来るのが特徴で副作用軽減とよりよい効果のために2010年3月より開始しています。
3)ホルモン治療(全身状態、年齢などによる)
*RALPでは、通常25度前後の頭低位で行います。緑内障などの眼圧の高い患者さんでは、頭低位角度の少ない腹膜外アプローチロボット支援下前立腺全摘術(eRALP)も行っています。
局所進行がん(StageC)
1)ロボット支援下前立腺全摘術(病期により拡大摘除術+拡大リンパ節郭清術)
2)ホルモン治療
3)放射線外照射治療(3D-CRT・IMRT)
進行がん(StageD)、去勢抵抗性がん
1)ホルモン治療、新規アンドロゲン受容体標的薬
2)抗がん化学療法(ドセタキセル、ジェブタナ®)
3)骨転移巣に対するラジウム223 による内照射療法(ゾーフィゴ®)
4)骨病変治療薬(ランマーク®、ゾメタ®)
ホルモン治療の効果が乏しくなった場合は、新規アンドロゲン受容体標的薬(ザイティガ®、イクスタンジ®、アーリーダ®、ニュベクオ®)への変更も積極的に行っています。
前立腺がんは、適切な治療戦略を立てれば比較的予後は良好で、がんが前立腺内に限局している場合の5年生存率は90%以上、がんが前立腺の周囲まで拡がっていても転移がない場合は60〜80%、リンパ節転移のみの場合は50〜60%、骨など他臓器など遠隔転移を有する場合は30〜40%とされています。
当院における前立腺がん治療法別の分布
最近は、RALP(ロボット支援下前立腺全摘除術)とIMRT(強度変調放射線療法)が、主に行われるようになってきています。もちろん、即時治療だけでなく無治療経過観察を選択される場合もあります。これからも、より患者さんに優しく、治療効果の高い前立腺癌治療を目指していきます。