医療センター

手術医療センター

センター長ご挨拶

大阪警察病院が地域の中核をなす急性期病院としての役割を継続して果たしていくためには手術室の安全で円滑な運営が必要不可欠であり、そうした環境だからこそ患者さんたちにも安心して手術を受けていただくことができるのです。麻酔科医の仕事は手術中の麻酔管理の他にも集中治療、ペインクリニック、緩和医療など多岐に渡るためほとんどの診療科の医師、病棟の看護師、その他様々な職種のスタッフと協働での作業となります。

こうしたことから手術室における麻酔科の役割も麻酔をかけることは当然ですが、各診療科・看護師・薬剤師・臨床工学士・医事課といった多業種の仲間たちとの連携を図り、その力を集約させるといった管理面でも期待されています。今後ますます医療技術は高度かつ複雑化していくことが予測され、こうした流れの中で安全性と正確性、安心を確立していくためには多職種の連携がより重要になってくると考えられます。

手術医療センターのスタッフとして麻酔科医のポジションを生かしてこれからも患者さんの求める医療サービスが提供できるよう努力していきたいと思います。

中央手術室

組織図

手術室での手術実績

スタッフについて(2020年6月時点)

師長 1名
副師長 4名
看護師
(主任を含む、うち男性看護師2名)
53名
看護助手 3名
クラーク 2名
CE 1名
放射線技師 1名
薬剤師 1名
<中央材料室> 看護師 1名
 技能員 1名
 洗浄委託業者 数名

各チーム活動

教育チーム

手術室の掲げる目標に則り、質の高い医療技術の向上を目指しながらプロフェッショナリズムが身につくように教育チームで取り組んでいます。なにより、ベテラン看護師から新人看護師まで、人間力としての感性が豊かに育つように、スタッフ会・リーダー会等で勉強会を実施し手術室が一丸となるチームを目指しています。



医材チーム

必要な手術器械を良好な状態で提供する為、滅菌セットや供給体制の見直しを常に行っています。多職種が関わる分野であるため、効率的に情報の共有、収集を行っています。





感染・環境整備チーム

カンファレンス等で勉強会や啓発を行い、スタッフの知識や意識向上を図っています。手術室感染チームとして、患者さんが安全に手術が受けられるよう感染対策を実施しながら、同様にスタッフの個人防御にも精力的に取り組んでいます。また、手術室での省エネに取り組み、患者さんのみならず、環境へも優しい手術看護を目指してみんなで頑張っています。



創傷チーム

当手術室では、WOC専門看護師と連携し手術中に起こる皮膚トラブルの予防に努めています。また、医師を交えて話し合いの場を持ち、早期に対策をとり皮膚トラブル0(ゼロ)を目指しスタッフ全員で取り組んでいます。




安全管理チーム

患者さんが安全に手術を受けられるよう、感染・器械物品など様々な視点から勉強会や啓発を行い、スタッフの知識や意識向上を図っています。

また、近年多発している大型地震について様々な取り組みを行っています。具体的には災害対策チームを作り、対応策やマニュアルの作成、災害訓練を積極的に実施しています。

手術室の機器について

da Vinci Xi システムとは

da Vinci Xiを使用した手術では、従来の開放手術では難しい繊細な縫合が可能で、出血量が低く抑えられる上、根治率が高く、より術後QOLを保てるため、患者負担の少ない手術と言えます。da Vinci Xi手術では、3Dモニターを見ながら腹部に小さな穴を6箇所開けてそこから鉗子を入れて手術を行います。

da Vinci Xi の長所として

  • 10~15倍の拡大かつ立体視野
  • エンドリストによる、直感的で繊細な手術操作
  • 手ぶれ補正等のロボット独特の操作性にて腹腔鏡下手術よりも、さらに繊細かつ高精度な手術が可能です。

母児同伴入室

 わが子が手術を受けると決まったとき、手術の大きさに関わらず麻酔や手術に対する不安・恐怖を感じるのは当然の事です。そこで私たちは、子供の不安・恐怖だけでなく、親への不安・恐怖の軽減も必須だと考えています。手術前に、母児同伴で手術室内のオリエンテーションを行っています。

当日は、母児同時入室、親立会いによる麻酔導入、事前に情報収集したキャラクターグッズの活用・吸入麻酔剤への芳香の添加などを利用して患者にあった看護に努めています。

グレードA帝王切開のシミュレーション

産婦人科 部長/西尾幸浩

 2018年6月9日、グレードA帝王切開術のシミュレーションを実施し、産婦人科、小児科、麻酔科、中央手術室、5階西病棟のスタッフが参加しました。
 帝王切開とは、産婦人科でも最も基本的な手術であり、母体、胎児に危険が迫っているときに行われます。このような帝王切開術の中でも胎児切迫仮死など、特に緊急度が高いものを「グレードA帝王切開術」と呼んでいます。「グレードA帝王切開術」では児の娩出までの時間を可能な限り短くする必要があり、そのためには関係するスタッフが一刻も無駄にすることなく妊婦さんに関わらなければなりません。

 これは究極のチーム医療であり、一朝一夕にできるものではありません。当院ではこのような事態になった際、安全で迅速に対応できるようシミュレーションを行いました。シミュレーションに加わった各部門の声を集めましたので、是非ご一読ください。


産婦人科 副医長/德川睦美

 グレードA帝王切開術が実際に起こる状況を想定し、各部署合同でのシミュレーションをしました。第1回としては日勤帯での状況を想定して実施し、その後、改善点を話し合うということを行いました。シミュレーション後グレードA帝王切開術の現場では、円滑に無駄な時間を省くことができました。
 まだまだ改善の余地があり、外来・夜勤帯に発生することも想定されるため、シミュレーションを継続していきたいと考えます。


小児科 副医長/山下朋代

 グレードA帝王切開術のシミュレーションに参加して、それぞれの役割を理解し、またグレードAの流れに関して認識することが出来ました。小児科側として、しんどい状況の胎児をできるだけ速やかに娩出し、蘇生対応が行えるような環境作りはありがたく感じます。その一方で、こういった緊急時に備えて日頃からの準備が必要と思いますので、今後も継続した練習、開催を行ってほしいと思いました。




麻酔科 副部長/清水智明

 シミュレーションはスムーズに行われ、また事前に想定していなかった問題点や、実臨床では流されがちな点が明らかになり、大変有意義であったと思います。訓練を通じて関係各署がグレードAに対する認識を共有し、当直帯など人手がない場合や、先日の地震時のようにエレベーターが停止した場合など、「こういった場合はどうしたらいいだろうか」といった問題点を皆で議論できる素地ができたことが今回の最大の成果だと考えます。


看護部 中央手術室/岡村厚志

 手術室では、フローチャートや緊急手術を素早く対応するため緊急対応部屋を確保する体制を整えて臨みました。今回のシミュレーションを通じて多職種からさまざまな意見を聞くことができました。この意見を踏まえ、次回はスタッフの人数が少なく、当直師長などにも協力を依頼する夜勤帯のシミュレーションも考えています。そして、効率的な体制と連携を構築し、より安全な受け入れ体制と連携を構築し、より安全な受け入れ体制を目指します。




看護部 5階西病棟/大西麻由

 今回、5階西病棟ではグレードAの対応に備えてアクションカードを作成し望みましたが、全体の把握がうまくできず今後の課題となりました。終了後のミーティングでは情報共有もでき、また母児の安全を守るための意識が統一されました。新たな課題に対して早急に改善し、全員がよりスムーズに動き、児が少しでも元気な状態で誕生できるようにしていきたいと思います。次回は人員の少ない夜勤帯でも対応できるようなシミュレーションを開催予定にしています。

出版書籍

術式別手術体位マニュアル

=決定版=
2006年 大阪けいさつ病院 手術室
URL:http://www.nissoken.com/book/1255/

 

 

 

 


中央材料室

診療や手術で安心して使用していただけるよう、安全で品質管理された完全な滅菌医材の供給を行うことをモットーとしております。

病棟、外来、手術室で使用した医材の洗浄は、超音波や微生物を殺滅できる機能を持つ洗浄機を併用しながら中央材料室が一括処理を行っております。器械のメンテナンスも、錆、ひび、作動チェック等1本ずつ行い安全に使用できるよう、厳しくチェックする体制をとっています。精度の高い滅菌を行うために、医材にあった滅菌方法の選択、滅菌工程の監視、滅菌効果の確認も毎回行うことにより完全滅菌医材の提供を行っています。毎日使用される医材の処理、滅菌管理を確実に行うことで感染防止に大きな役割を果たしていると誇りを持っております。

臨床工学科

臨床工学技士とは、医師の指示のもとに生命維持管理装置の操作および保守管理を行います。生命維持管理装置は、人工心肺装置・人工透析装置・人工呼吸器などがあり、循環・代謝・呼吸を肩代わりするものをいいます。臨床工学技士は医学と工学の両方の知識を有する国家資格であり、日々進歩する高度医療機器を用いた診療・治療を安全に行うため、医療機器の専門家として操作・保守・管理を行います。また医師、看護師や他の医療技術者と連携し、チーム医療の一員として患者さんの治療に携わっています。

当院での役割

当院では業務拡大に伴い臨床工学技士も増員され、現在13名が常勤しています。業務内容としては、高度な医療機器を操作する臨床支援業務と、院内の医療機器の保守点検といった医療機器安全管理業務にあたっています。各業務とも24時間体制で緊急呼出しに対応できるようにしています。また、業務の質の向上のため、積極的に研修会・学会等に参加し、さらに臨床工学技士以外の資格取得に取り組んでいます。

学会認定資格:体外循環認定士(6)、呼吸療法認定士(4)、臨床ME専門士(2)、第二種ME技術実力検定(9)、透析技術認定士(3)、人工心臓管理技術認定士(2)

※2021.9現在

人工心肺業務

心臓手術の際、一般的に心臓を止めて手術を行いますが、心臓が止まっている間、心臓と肺の役割を果たす人工心肺装置を操作し、患者さんの循環を維持する人工心肺業務があります。臨床工学科が発足する以前の1979年より行い、信頼される循環器専門施設の高度医療に対応すべく、24時間体制でいつでも臨床工学技士が立会い、安全で質の高い医療技術サービスを提供しています。

年間約100~150件の心臓・大血管の手術時に人工心肺操作を行っています。また、心原性ショックに用いられる補助循環(PCPS、IABP等)の操作・管理も臨床工学技士が行っています。

血液浄化業務

血液透析(HD)、持続血液透析濾過(CHDF)のほか、血漿交換(PE)、白血球除去療法(LCAP)、エンドトキシン除去療法(PMX)などの血液浄化を行っています。年間300~450件の急性血液浄化を行い、24時間体制にて対応しています。

医療機器管理業務

器材センターにて輸液ポンプ(160台)・シリンジポンプ(129台)・DVT防止用ポンプ(38台)・人工呼吸器(24台)等の中央管理を実施しており、病院内の医療機器を効率よく、常に安全な状態で使用できるように保守管理体制をとっています。他の医療機器も臨床工学技士が窓口となり、医療機器の不具合処理・修理および医療機器業者への修理依頼などを行っています。

手術室業務

2010年4月より臨床工学技士が手術室に常駐になりました。業務内容は、手術室設備点検・術中使用機器の保守点検・看護師教育など多岐にわたります。手術の安全かつ円滑な進行のため医療機器の安全性・信頼性の確保の為、医師・看護師と連携をとりながら日々業務に取り組んでいます。

植込み型補助人工心臓業務

2019年1月より植込み型補助人工心臓実施施設となりました。主な業務内容は、植込み型補助人工心臓(iVAD) の外来、入院管理業務、iVAD新規植込み時の手術立ち合い、また患者さん、家族、職員に対してのiVAD取扱い説明業務などを行っています。認定士2人を中心に、iVAD患者さんが安心、安全な日常を送れるように医師、看護師、理学療法士など多職種と連携し日々業務にあたっています。

心臓カテーテル室業務

2020年度より、臨床工学技士によるカテーテル室業務が開始されました。主な業務は診断カテーテル、治療カテーテル、アブレーション業務、植込みデバイス業務と多岐にわたります。専門的な知識を有する臨床工学技士が業務にあたり、年間1,500件を上回る件数に対応しています。

ダヴィンチ業務

手術支援ロボットであるダヴィンチは専門的な知識が必要とされる医療機器です。医療機器の専門知識を有する臨床工学技士が、準備から手術中、手術後、メンテナンスのすべてに携わっています。ダヴィンチを常に最善の状態で維持し、トラブル時も即座に対応するのが我々臨床工学技士の役割です。

術中モニタリング業務

術中モニタリングはMEP,SEP,ABR,VEP,CCEP,FREMAP,DNAP,D-wave,AMRなど多岐にわたり、神経機能の温存に重要な役割をはたしています。臨床工学科は、年間60例程度すべての症例に対応し、外科医、麻酔科医、看護師と意見交換しながら業務にあたっています。

臨床工学科新人教育

 臨床工学科では、新人教育計画表を作成し、計画的な新人教育を行っています。また、個人の業務修得状況を把握し、状況に応じて教育計画を変更しています。

 入職1年目は医療機器管理業務を中心に、血液浄化、手術室業務を行い、医療機器管理業務、血液浄化業務は1年目での修得を目標とし、2年目からは、手術室でのロボット支援手術などの指導を行います。人工心肺業務は、1年目では、手術前の準備や人工心肺操作の記録などの基礎教育、2年目からは心筋保護液装置の操作、3年目から人工心肺装置の操作を行い、3年間ですべての業務を修得します。現在13名中、7名がすべての業務を修得し、6名が教育中です。患者さんへ質の高い医療を提供するため、チーム医療に貢献できるジェネラリストの育成を目標に新人教育を行っています。

※2021.9現在