医療センター

前立腺がん治療センター

診療科のご紹介(診療内容や当院での特徴的な取り組み、得意分野など)

 前立腺がんは泌尿器科だけの疾患ではありません。複数の診療科の協力が必要な疾患です。このために当院では、前立腺がんのすべてを診療科の枠を超えて統括するために、前立腺がん治療センターを設立しました。

 近年、本邦における前立腺がんの患者数は著明な増加を示しており、男性のがんの罹患率では、最も多いがんの一つとなっています。したがって、今後ますます前立腺がん診療の重要性は社会全体としても、当院でも増大してくると考えられます。当院においては、このような認識のもとで前立腺がん治療の診療体制を整備します。個別の治療手段ということでは、手術、放射線治療(IMRT、3D-CRT等)を行っています。これらの前立腺がん治療は泌尿器科単独で行うものではなく、放射線治療科との共同診療を始め、治療方針の決定には病理診断科や放射線診断医の意見も重要であります。このような事情から、前立腺がんの治療に当たっては診療科の枠を超えて連携する必要性を痛感してきました。この連携を確実に、継続して発展させるためには診療科の枠を超えて前立腺がん治療全体を統括する組織が必要であります。この具体的な形式として、前立腺がん治療センターを設立しました。 

主な対象疾患

当院で診療を受けるすべての前立腺がん症例を対象としています。

治療方針

泌尿器科、放射線治療科、病理診断科の3科合同で治療方針検討会議(カンファレンス)を構成しています。

  1. 全症例の治療方針は、3科合同の治療方針検討会議(カンファレンス)で決定します。
  2. 決定された治療方針に従って、最終的には患者と相談の上で個別の治療計画を決定します。
  3. 個別の治療計画に従って、それぞれの診療科が、場合によっては共同で治療を担当・実施します。

一次治療後の再発症例について、二次治療も検討対象とします。

外来受診について

 受診窓口は泌尿器科外来です。月曜から金曜の、午前11時までにお越しください。すでに他施設を受診されている方は紹介状とレントゲン、病理検査などの資料をお持ちくださいますようにお願いします。
当院の前立腺がん治療センターでは、誰が担当しても、同じ治療方針の下で、同じ治療を提供します。このために専門外来は設置しておりません。

ご紹介くださる先生方へ

 前立腺がん治療センター設立の一番の大きな意義は、当院における治療適応基準の統一です。統一した適応基準に従って治療方針を決定することにより、治療成績が安定することが期待されます。多くの施設では、新規に前立腺がんと診断された場合に泌尿器科外来担当医個人の説明だけで、治療方針が決定されています。すなわち、担当医個人の裁量、あるいは恣意によって、適応が異なることがありえます。また、治療手段の偏りから一つの治療法に傾いた説明がされることもあります。多様な治療手段を備えた上で、適応基準を院内で統一するということを目指しています、すなわち、担当医個人に左右されることなく、治療手段をすべて揃えた上で、誰が外来を担当しても統一された適応基準で、個別に検討された治療方針を提示します。適応外の治療が実施されれば(多くの場合は手術に傾きがちですが)、治療成績の低下、あるいは治療成績そのものの信頼性を揺るがすものであると思われます。以上の理由で、治療適応基準の統一は治療成績の安定化、向上に不可欠であると考えています。

診療・検査・手術等の実績

①当院における前立腺生検の実績を示します。近年、年間約200-250例の前立腺生検を行い、陽性率は約49%です。したがって、年間約100-150例の新規前立腺がん症例を診断しています。これ以外に、他院で診断されて当院での治療を希望されて受診される場合もあり(特にロボット手術)、年間約150例の一次治療を開始しています。

年別生検件数と陽性率

当科におけるロボット手術

②当院における前立腺がん治療法別の分布を示します。最近は、RALP(ロボット支援下前立腺全摘除術)とIMRT(強度変調放射線療法)が、主に行われるようになってきています。もちろん、即時治療だけでなく無治療経過観察を選択される場合もあります。これからも、より患者さんに優しく、治療効果の高い前立腺癌治療を目指していきます。

当科における限局性前立腺がんに対する治療