診療方針(産科)

無痛分娩について

当院での無痛分娩の特徴

  1. 総合病院ならではの充実した診療体制
  2. 麻酔科医、産科医、小児科医、助産師のチームによる安全な無痛分娩の提供
  3. 院内に24時間、麻酔科医・産科医・集中治療医が常駐
  4. 充実した内容の無痛分娩教室、ママパパクラスの受講可能
  5. 産後ケアを引き続いて利用可能

 ※正期産に限ります。状況により計画分娩になることもあります。

無痛分娩とは

麻酔を用いて陣痛の痛みを和らげる方法を用いた分娩です。

当院では赤ちゃんへの影響が少ない脊髄幹麻酔を行っています。
具体的には、①脊椎の中の硬膜外腔に細いチューブ(カテーテル)を挿入して、麻酔薬を注入し、痛みを和らげます。
あるいは、②脊髄くも膜下腔に直接薬剤を投与します。

無痛分娩までの流れ

無痛分娩予約
  電話予約あるいは妊婦健診時に無痛分娩を受けたいことをお伝えください

無痛分娩教室受講
  産科医師、助産師からの詳しい説明(対面)

無痛分娩事前検査(妊娠34週ごろ)
  産科医師から説明、血液検査が必要です

麻酔科外来受診(妊娠36週ごろ)
  麻酔科医による診察、説明があります

陣痛がきたら
  当院へ電話連絡して入院 各種同意書をお忘れなくお持ちください

各学級の受講

無痛分娩を希望される方は、無痛分娩について正しく理解していただくために、必ず無痛分娩教室を受講していただきます。
また、無痛分娩といっても痛みがゼロになる訳ではありませんので、陣痛と上手く向き合い、より安産になるようママパパクラス【運動編】【分娩編】をそれぞれ受講していただきます。
受講されていない場合、無痛分娩が出来ませんのでご了承ください。
各学級の予約については助産師との面談の際にご説明いたします。

脊髄幹麻酔(硬膜外麻酔・脊髄くも膜下麻酔)を開始するタイミング

規則的な陣痛が来て鎮痛を希望された時、分娩進行の状況を判断して無痛分娩を開始します。通常は子宮の出口が3-5cm程度開いてから麻酔を開始することが多いです。 脊髄幹麻酔の開始が早すぎると分娩が長引く傾向があるため、ある程度分娩が進行してから麻酔を始めるのが望ましいとされています。

硬膜外麻酔は、背中のチューブから局所麻酔薬を投与して陣痛を和らげます。20~30分で鎮痛効果が現れます。脊髄くも膜下麻酔では、腰の真ん中を細い針で刺して、くも膜下腔にお薬を投与して陣痛を和らげます。5~10分で鎮痛効果が現れます。

陣痛中のお腹の張りや赤ちゃんがお尻を押す感覚を残しながら麻酔を行います。

逆に、陣痛が全くわからなくなるほど十分麻酔が効いているとき(いきむことが出来ない)や、分娩の進行状態によっては麻酔薬の量を調整します。

無痛分娩中の制限

無痛分娩中は以下のような制限事項があります。

×飲食
無痛分娩中は食事はとれませんが、水やお茶やポカリスエットなどの飲水は可能です。ただし、分娩時間が長くなる場合には、必要に応じて軽食をとって頂くことがあります。

×歩行
麻酔を開始後は足に力が入りにくくなることがあり、転倒する危険があります。原則ベッド上で過ごしていただきます。

×排尿
ベッド上安静となるのでトイレに行けません。そのため、必要に応じて尿道に細い管を入れて導尿します。

無痛分娩にかかる費用

通常の分娩費用に加えて15万円の費用がかかります。短時間であっても処置を行った時点で費用が発生します。

無痛分娩で起こりうる副作用や合併症

脊髄幹麻酔の安全性は確立されていますが、いくつかの副作用が確認されています。そのため、脊髄幹麻酔中は常に血圧・心電図・酸素飽和度などをモニターをつけて観察します。また、赤ちゃんの心拍モニターも継続して行います。

副作用
血圧低下 低血圧予防のため横向きの姿勢をとって頂くことがあります。点滴や昇圧薬を投与します。
分娩遷延 分娩第2期(子宮の出口が全部開いてから赤ちゃんが生まれるまで)の時間が長くなることが多くなります。その場合には陣痛促進剤や吸引分娩が必要になることがあります。分娩の進行によっては帝王切開が必要となることがあります。
排尿障害 一時的に排尿障害が起こることがあり、その場合には尿道に管を入れて出すことがあります。
発熱 38度以上の発熱を起こすことがあります。
かゆみ 麻酔薬の影響で皮膚に痒みを生じることがあります。
下肢の神経障害 足に力が入りにくい・足の感覚が鈍くなる症状が出ます。
頻度の高い合併症
麻酔効果が十分に得られない(10%) 分娩中の痛みが十分に取れない、あるいは体の片側だけにしか麻酔効果が表れないことがあります。
頭痛 出産後に硬膜外麻酔で1~3%、くも膜下麻酔で3~10%の方に起こります。立ったり座ったりすると強くなるため、授乳が辛いと感じることがありますが、たいていは1週間以内に落ち着きます。
重篤な合併症

以下の重篤な合併症は非常に稀です。初期の段階で適切に対応することで重篤になるのを防止することができます。

局所麻酔薬中毒 局所麻酔薬の過量投与や血管への注入などが原因で、けいれんや不整脈が起こります。
高位・全脊髄くも膜下麻酔 カテーテルがくも膜下に迷入することが原因で、足に力が入らなかったり、息が苦しくなるような症状が起こります。
アナフィラキシーショック 薬剤に対するアレルギーが原因で起こります。
硬膜外血腫・膿瘍 硬膜の外に血や膿の塊ができることもあります。どちらも神経を圧迫して感覚や運動を麻痺させることがあります。
細菌性髄膜炎 脊髄腔の中に細菌が入り込み感染を起こすことで頭痛・背部痛・悪寒・吐き気・嘔吐などの症状を引き起こします。重篤な場合には死亡することもあります。

無痛分娩を実施できない場合

以下のような場合には、無痛分娩を希望されていても実施できない場合がありますのでご了承下さい。

麻酔科医や産婦人科医の業務状況(緊急手術や重症患者の対応中など)によって、妊婦様の安全な無痛分娩の実施が不可能と判断された場合(対応が可能となれば、その時点から無痛分娩をすることは可能です)

②分娩の進行が速すぎて(超安産)、硬膜外麻酔のチューブの挿入やくも膜下腔への駐車をする間もなく分娩となった場合

妊娠中の合併症元々あった病気の影響や悪化などで硬膜外麻酔の適応から外れた場合
※止血凝固異常がある場合(血液疾患や抗凝固薬/抗血小板薬内服など)、脊椎に問題がある場合(脊椎手術後や脊髄疾患やヘルニアなど)、頭蓋内圧亢進状態、穿刺部位の感染、薬剤アレルギーなど

無痛分娩情報公開

お問い合わせ先

大阪警察病院 産婦人科外来
06-6771-6051(代)
オペレーターに「産婦人科外来まで」とお伝えください。
平日(月~金)15:00~16:30(年末年始を除く)